CROSS TALK

様々なバックグラウンドを持つプランナーたちが語る、メディアエージェンシーのプランナーの仕事とは。

  • Ryoko

    Deputy Division Director

    (写真中央)1998年に新卒入社。2年間アナリストチームに所属した後、20年以上メディアプランナーとして勤務してきた経験を持つ。

  • Daigo

    Digital Planner

    (写真右)2018年に中途入社。デジタルのバックグラウンドを活かし、クライアントの課題解決に取り組んでいる。

  • Hajime

    Media Planner

    (写真左)2014年に新卒入社。1年半のテレビバイヤーを経た後、メディアプランナーとして複数のクライアントを担当。

皆さんの自己紹介をお願いします。ご自身の強みだと思う部分も教えてください。

  • Hajime

    2014年4月に新卒入社して6年目です。現在はメディアプランナーとして車のクライアントさんを担当しています。入社してすぐの2年間はテレビバイヤー、次の1年間は業務推進局でテレビ局の予算配分などを担当し、その後プランナーとなって現在に至ります。強みは「八方美人であること」。クライアントにも様々な立場の方がいるし、弊社の中でもクリエイティブ、営業、戦略プランナーと多くのメンバーがそれぞれの立ち位置で動いています。関係するすべての人たちを満足させるのが大事だと思っていますし、それを達成できるのが自分の強みだと思っています。

  • Daigo

    中途で入社して1年半が経ちます。デジタル広告運用のマネージャーとして入社する予定だったのですが、入社してすぐにEコマースの提案書を書くことになり、入社前に思っていた仕事と全然違う……となりました。当時のCEOに「プレゼンは魅せることが大事」と言われたりして、無駄に長大な資料になったのは懐かしい思い出です。(笑)
    そのような入り方で、現職種に落ち着いているので、言うなれば「何でも屋さん」をやっているイメージです。この会社は他のエージェンシー(※マッキャンワールドグループ内の各組織はそれぞれ制作、PR、セールスプロモーションなどの特定の領域に特化しており、それぞれをエージェンシーと呼ぶ)を巻き込んでいろんな人と働けるし、情報のアップデートも国内に限らずいろいろなところから来るというメリットがありますね。

  • Ryoko

    1998年に新卒で入社して、最初の2年間は社内の調査やプランニングツール開発・管理等をする部署にいました。それ以降20年ほどメディアプランナーをやっています。入社当時はマス4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)とOOH(屋外広告)が中心で、インターネット広告はあったとしても紙の値段表を見て買い付けるようなイメージでしたが、そこから時代は大きく変わったと日々感じています。今は、テレビバイイング機能を持たない協業会社の案件のプランニングとバイイングをサポートする部署にいます。
    強みは「自分のことを大嫌いという人はいない」ことかな。あとは、データを見て新しいことを発見することが好きなので、メディアプラニングの効率改善なども興味を持って取り組めていると思います。

広告代理店には「プランナー」と名の付く職種がたくさんありますが、「プランナー」ってそもそも何だと思います?

  • Hajime

    個人的な定義ですが、「〇〇プランナー」という名称の意味は、「〇〇のことは最低限考える人」だと思っています。つまり、“メディア”プランナーだったらメディアのこと、“ストラテジック”プランナーならストラテジーのことについて、最低限考える人。それ以上のことも、必要があればどんどん提案していく。
    僕はメディアプランナーという肩書きで働いていますが、プロダクトが複数あるなかでどこに予算を投下すべきかというポートフォリオストラテジーや、生活者のヒアリング調査のデータからどういったメッセージがターゲットに刺さるかというコミュニケーションストラテジーなど、いわゆるメディアプラン以外のことも提案しています。我々は最終的にメディアプランを考えることになるのですが、そこに至るまでに必要になる要素は併せて考えていますね。

  • Daigo

    その名のとおり、「プランする人」でしかないと思います。もちろん、闇雲にプランするわけではなくて、マインドとしては、「クライアントのビジネスの成功に向けて、責任を持って計画する責任力のある人」だと思っています。マッキャンエリクソンではコミュニケーションプランナー、媒体本部ではメディアプランナーと名前が付いていたりしますが、領域はこだわらなくてもいいと思っています。それぞれ考える起点がどこにあるかでしかないので。

  • Ryoko

    私は、施策がいろいろある中で、「目的の定義付け」と「費用対効果の立証」がメディアプランナーの仕事だと思っています。メディアプランは投資なので、そこにお金をかける価値があるのかをクライアントにちゃんと提示しますし、終わった後は効果があったのか検証して説明する必要があります。

  • Daigo

    あと、自分の認識だと「プランナー=営業」ですね。営業視点が無いとプランがずれてしまうと思います。

  • Hajime

    クライアント社内の政治なども含めて、クライアントが何を求めているかという「クライアントインサイト」を捉える必要があるので、その点では営業的だと思いますね。弊社ではプランナーが自分でプレゼンを行うことも日常茶飯事なので、クライアントに提案を買っていただくために、常にクライアントインサイトを意識しています。

プランナーという仕事において、昔と今とで変わったところはありますか?

  • Ryoko

    ご存じのとおり、昔のメディアの役割は「広く知らしめること」だったんですよね。今は、最初の「知ってもらう」部分だけじゃなくて、見込み顧客のナーチャリングや購買までも含めて、ものごとを考えないといけなくなっていますね。

  • Daigo

    メディア自体も広がっていますし、メディアプランナーといってもテレビなどのマス広告のことだけじゃなくて、いわゆる「広告」以外の領域もプランしなきゃいけなくなっていますね。

  • Ryoko

    あとは、一つのプランニングをするだけでも、PRに強い人やデジタル獲得に強い人など、協業しなきゃいけない関係者の数が多くなってきていると思います。

  • Hajime

    広告を出す面の設定をする以前に、タッチポイント(顧客との接点)をどのように作って、それで対象のターゲットの意識や行動がどう変わってほしいかというところまで考えるので、今までと比べてメディアプランナーという仕事もコミュニケーションの上段の部分に業務領域が進出している感じがありますね。

プランニングにおいて大事にしていることはなんですか?

  • Daigo

    自分が広告主側だと想像して、「自分がやりたいか」を大事にしている。クライアントから「予算はたくさんあるのでこれをやりたいんです」って言われても、自分の思想と違えば喧嘩しちゃうかも。(笑)

  • Hajime

    それはすごい。自分にはできないです。(笑)

  • Daigo

    案件を失っちゃいますけどね。(笑)かつて、上司から「頭下げろ!」て言われたりもしました。一般的には良くないことかもしれないけれど、僕は僕が楽しいこと以外をやると手を抜いちゃうので。自分なら絶対やるなって決めたことをやりたいです。

  • Ryoko

    私はなかなかDaigoさんのようにはいかないかなあ。クライアントの知識レベルや状況は様々なので、自分のことを押し付けるということはあまりしないです。でも、どっちのスタンスがクライアントに好まれるかってわからないんですよね。こんな感じで、いろんな考えの人がいるというのは、エージェンシーとして良いと思います。

  • Hajime

    私も八方美人なのでDaigoさんのやり方はすごいなあと思います。自分だったら、ちょっとだけ自分の思う「正しいこと」を混ぜるやり方をするかもしれないです。例えば、キャンペーンが3つあったら、2つはクライアントがやりたいことにして、1つだけ自分が正しいと思うことを紛れ込ませる、みたいな。それでキャンペーンが終わった後に効果を検証して、少しずつやりたい方に比重を変えていったりしますかね。

今のDaigoさんの話をもう少し深掘りしますが、やりたいことって具体的にはどういうことですか?

  • Daigo

    正しいこと、売上に繋がることですね。「今までこのメディアを使ってきて、世の中にはこのブランドはこういう見え方になっています。だから変えなきゃいけない。それなのに使用するメディアは今までと同じになっています。それで新しいメッセージはちゃんと伝わりますか?」と思うことがある。新しいことをやりたいクライアントでも、合わなければ喧嘩をします。これまでそれで2つくらいビジネスを失いましたが。(笑)

  • Hajime

    それはすごいなあ。サラリーマンとして良い会社の使い方だと思います。でも、怖くなったりしませんか?(笑)

  • Daigo

    金額によります。(笑)ただ、ポジションを取るのは大事だと思っています。でなければ競合の会社と一緒になって埋もれてしまうと思うので。

  • Ryoko

    たぶん、Daigoさんは喧嘩でもしないとクライアントが間違った方向に進んでしまうという危機感を感じたことがあるのだと思います。

  • Hajime

    「プラニングにおいて大事にしていること」の話に戻りますが、私の場合は「人間が想像できるか」。例えば、担当するクライアントの商品カテゴリーについて自分がそこまで詳しくない場合、友人でも社内の人でもいいのですが、詳しい人に話を聴いてみる。その話に基づいて出てきたインサイトをデータと照らし合わせてみると合致したりするし、逆にデータから出てきたインサイトっぽい発見を個人にぶつけてみると、ここは合っている、ここはちょっと違うとわかってくる。最終的に、自分のなかで「こういう人が世の中に確かに存在する」と信じられるまでプランします。主観と客観の両方が合うまでやる、という感じかもしれないです。

この会社のプランナーという仕事の一番の魅力は何でしょうか?

  • Hajime

    自分でゴールを決められるという点が楽しいと思います。過去やっていたバイヤーの仕事との違いについて言えば、ゴールがあってゴールまでの道筋をどう作るかを考えるのがバイヤー。広告枠を1本1万円で買い付けなければならないなら、その1万円をどう達成するかを考える。一方でプランナーは「1万円にしなければならない」とゴールを決める仕事です。
    あとは、Ryokoさんもおっしゃっていましたが、「発見」は私も好きですね。例えば、最近ある案件で、テレビCM放送直後のウェブサイトの訪問数が増加するという発見がありました。これ自体は媒体社や競合代理店のリリースなどでもよく言われていることなんですが、さらに深掘ると、テレビ経由で来ているユーザーは購買に繋がるようなページを訪問する割合も高かった。それを見て「おおっ」と思いました。テレビ広告で良質なユーザーを獲得できているわけです。メディアというものを、オウンドメディアも含めて横断的に分析しながらストーリーを作ることができる、考える領域が広いというのが楽しいですね。

  • Ryoko

    自分のやりたいことや、興味のあることがやりやすいことが楽しいと思います。下世話な話ですが、好きな芸能人がいて、ある雑誌に出ているから、その雑誌を提案する、みたいなこともできます。もちろん、まずはクライアントの求めているものがあるので、それと合致した上でという話ですが。うちでは複数のクライアントを持つことが多いので、チャレンジする機会はたくさんあります。それが良いと思います。

  • Hajime

    やりたいこと、という意味では、マッキャンは配属リスクが低いと思います。異動や担務変更の機会が多くて、自分から手を挙げることもできる。他の人に伝えるときには、キャリアの流動性が高いという表現をしています。プランナーの職種に限らず、自分の領域を広くとることができる。今の時代の若い人にとって、良い環境だと感じます。

クライアント向き合いにおいて大変だったことや辛かったことを教えてください。

  • Ryoko

    精神的に辛い案件があります。過去、施策ローンチの前日に商品の不具合が見つかってしまって、ローンチ前日にお蔵入りになってしまいました。クライアントと戦略からしっかり議論してやってきたものが、アウトプットされる直前に無くなってしまうと悲しくなりますね。

  • Daigo

    精神的に辛いというところで言うと、この会社に入って最初、クリエイティブのチームと会話するときにカルチャーや言語が違ったという経験がありました。「戦略」という言葉は「コミュニケーション戦略」を指すのだと初めて知りました。あとは、数字のKPIがないのにどんどん話が進んでいくとか。

  • Hajime

    「戦略」という言葉はけっこう幅が広いですよね。

  • Daigo

    自分も分からなくなってきちゃって、「戦略とは何か」みたいな本を読もうと思って。(笑) 戦略、戦術、オペレーションみたいな言葉の定義をひっくりかえして確認してみたりしました。当時はモヤモヤしていましたね。
    苦労したことでいうと、デジタル案件、特に獲得案件(※購買数や成約数など、セールスに紐づいた数を効率よく獲得することが求められるコミュニケーション)だと終わりが無いんですよ。獲得コスト1万円を目標にしてそれを無事に達成した後、なぜか翌月からコスト9000円が目標になっているとか。それを達成していくのはなかなか辛いものがあります。

  • Hajime

    プランニングも終わりが無い仕事という意味ではしんどさはあります。さっきは足りない部分を補いに行けるという話をしましたが、永遠に提案の内容を向上していけるという意味ではタフですね。逆に、理想があっても時間やリソースの制約によって辿り着けないこともあるのですが、自分は完璧主義なのでそれも辛い。

みなさんが広告代理店に入りたいと思った理由を教えてください。

  • Hajime

    あんまりマジョリティな志望動機ではないと思いますが……。大学の2年生くらいからずっとブログを書いていて、そのブログを通して数十人の人とリアルで知り合ってきました。だけど、届けたい人、届くべき人に届いているかわからないという気持ちも同時にありました。広告代理店に入れば、届けたい人に届ける技術が身に付くかなと思いました。

  • Ryoko

    私が入社した当時、広告代理店は華やかだったこともあり、個人的に強いモチベーションがあったわけではないかもしれません。(笑)

  • Daigo

    私は、この業界に入る前は商社で輸入した水産物を朝から晩まで売っていて、それがすごくしんどかったです。当時の商社への志望理由は、海外に行きたかったというだけ。仕事をするなかで、元々中学生の頃からウェブサイトを作っていたということもあって、水産物もEコマースで売ればいいじゃん、と思うようになりました。もっと仕組み化をして、大きく売りたいという気持ちがあって、転職を考えました。最終的にデジタルに強い専業広告会社に内定を頂いて、広告業界に入ってきました。

今後、広告代理店はどうなっていくと思いますか?

  • Ryoko

    個人が立つようになるイメージです。これまでのメディアビジネスは、会社としての色を売ってきたところがあると思います。電通 WAY、博報堂 WAY、McCANN WAYというものがあったと思う。だけど、これからの時代は、エグゼキューションが機械化されて会社によって差が出なくなり、もっと人が目立つようになって、それで選ばれるようになると思います。実際、競合プレゼンテーションの自社の紹介の資料でも、以前は「ビジネスを頂いたら、この役割・役職の人を付けます」という内容に留まっていましたが、今は「どういう人が担当になるのかの詳細なプロフィール」まで求められるようになってきた印象があります。

  • Daigo

    全体としては、スペシャリストが増えていくと思います。その人たちを上手くまとめられる広い知識を持った人も必要です。Ryokoさんと同じことかもしれませんが、クライアントとの付き合い方も大きい組織どうしで付き合うというのは無くなってきて、「この人にお願いしたい」みたいになってくると思います。広告会社にどういうことをして欲しいかという個人的な話をすると、「ユーザーに対して面白い体験を実現する」仕事だと思うので、「実際にユーザーとして触れたコミュニケーションが楽しかった、それが広告だった」という施策が増えるといいなあと思っています。

  • Ryoko

    スペシャリストが増えてくるというのは、社内で?それとも会社を跨いで協業していくイメージでしょうか?

  • Daigo

    同じ会社で増やした方が、その会社は強くなるとは思いますね。

  • Ryoko

    これからは得意領域を作っておいた方が良いと思いますね。ソーシャルに詳しい、とかがあると良いのでしょうか。

  • Hajime

    よく“T字型人材”とか言われていますが。メディアプランニングの話でいうと、プランニングの戦略策定からエグゼキューションまでの全工程がわかり、その過程でのメディアセレクションにおいてペイドメディアの六媒体がすべてわかる、というスキルを全員が持っている状態で、それぞれの人のより強い得意領域がオーバーラップしていくのが理想だと思います。テレビが強い、デジタルが強い、紙媒体がめっちゃ詳しい、みたいな人がそれぞれいて、提案の中身に応じてその人にブラッシュアップの相談をする、みたいな。
    コンサルに近くなるということも言われているけれど、個人的には広告代理店の価値はクリエイティブだと思っているので、まだ競合にはならないんじゃないかと。クリエイティブというのは、世の中に新しい人の動きを創り出せる力です。メディアはある種の環境なので、クリエイティブによって生まれた新しいユーザーの動きをメディアで捉えて、そのユーザーに向けて次のコミュニケーションを設計できる人間が、メディアプランナーとして求められていくんじゃないかと思います。

最後に就活生に向けて、就職前にどういうマインドセットがあると良いと思うかをお願いします。

  • Hajime

    一貫した、固定化したキャリアを想像しない方がいいと思います。極端な発言になりますが、会社に入るというのは凡人の道を選ぶことです。つまり、雇われることでしかお金を貰えない。お金を貰うということは、会社が最終的にやりたいことに従う必要も出てきます。それが嫌なら辞める。辞めて自分でやっていけるのか。時には意に沿わない配属や担務もありえるかもしれませんが、その意味で配属のリスクが少ない会社に入るべきだと思います。会社で働くなかで、自分の向き不向きについて学びを得ることも多いです。そのなかで、自分に向いている領域がわかってくる。就職するというのは自分のことを知っていくことだと、個人的には思っています。

  • Daigo

    私はもともと会社にずっといるつもりがなかったので、マインドセットは無かったですね。ただ、学びたいと思っている社員に会社が学ばせてくれる期間は意外と短いので、やりたいと思ったことを自分から発信した方がいいとは思います。

  • Ryoko

    いろんな人がいて会社が成り立つと思います。スター的な人だけでは成り立たない。自分の強みと弱みを知っていることが大事です。卒業までの時間で、できるだけ強み弱みを見つけてほしいです。