CROSS TALK

メディアバイイングスペシャリストたちが語る、これからのバイヤーの姿

  • Kiyotaka

    TV Buyer

    (写真左)明治大学卒、新卒入社5年目。学生時代はラグビーをして過ごした。新聞、雑誌のバイヤーを経て、現在はテレビバイヤー。

  • Kanami

    TV Buyer

    (写真中央左)日本体育大学卒、新卒入社2年目。テレビバイヤー。学生時代はタッチラグビー、集団行動をして過ごした。

  • Suguru

    TV/Radio Buyer

    (写真中央右)日本体育大学卒、新卒入社8年目。テレビ、ラジオ、新聞、フリーペーパーなど、様々なメディアのバイイング業務を歴任。

  • Shunsuke

    Digital Planner

    (写真右)慶応義塾大学卒、新卒入社3年目。テレビバイヤー、デジタル運用者を経て、現在はデジタルプランニング業務に従事。趣味はトライアスロン。

自己紹介と、皆さんがどのメディアのスペシャリストなのか教えてください。

  • Kanami

    新卒入社2年目です。1年目は日本テレビ系列、2年目はTBS系列のテレビ局のバイヤー(※広告の枠を仕入れる業務の担当のこと)をしています。
    自分のことを、素直でひたむきに頑張れる人物だと思って就職活動をしてきたので、テレビバイヤーでも同じように頑張っていきたいと思っています。

  • Suguru

    新卒入社8年目です。最初の2年間は新聞とフリーペーパーのバイイングをやりました。3年目から現在まではテレビとラジオを幅広く扱っています。地上波はもちろん、BSや専門チャンネルも担当しています。
    バイイングのキャリアがそれなりに長くなってきたので、弊社の中の環境はある程度わかると思います。広告代理店内部の環境を知っていると媒体社(※テレビ局、新聞社、デジタルメディアなどのメディアのこと)の売り物は売りやすいですね。

  • Kiyotaka

    新卒入社5年目です。1年目は新聞がメイン、2年目は雑誌メインでバイイングをやりました。それ以降はテレビのバイヤーをしています。紙と電波の両方を担当した経験から、媒体ごとに売り物に対するスタンスの差があることを感じました。
    できているかどうかわかりませんが、仕事においては「人の気持ちがわかること」が大事だと思っています。言い方によって誰が嫌な気持ちになるか、などを考えて、それを大事にしています。なので、気遣いのスペシャリストと呼んでもらえれば。(一同喝采)

  • Shunsuke

    新卒入社3年目です。1年目はテレビのバイヤー、2年目は運用型広告のバイヤーをやりました。3年目の今年は、2年目までの経験を踏まえて、データを活かしたデジタルプランニングの提案を行いながら、得意先と関わっています。
    与えられたことをできるようになるだけでなく、そこにどういう付加価値を出すかということを考えるようにしています。例えば1年目の時を思い返すと、自分に与えられていたテレビスポットの業務の役割だけでなく、地方局のタイムの作業にも関わりました(※スポット、タイムは、それぞれテレビの広告枠の種類)。デジタルでも自主提案をしました。広告枠を買うだけではなく、自分にできること、領域を超えて提案していくことを日々考えています。越境のスペシャリストと呼んでください。(一同喝采)

マッキャンエリクソン媒体本部ではバイヤーという言葉が使われますが、マッキャンのバイヤーの特徴は何でしょうか。

  • Suguru

    日本の広告代理店のメディア部門は、媒体社から手数料を得ることでビジネスをしています。彼らは媒体社からお金をもらっているので、必然的に媒体社側に比重を置くことになります。その意味では、日本の広告代理店のメディア担当は、媒体社の売り物を売る人と言えるでしょう。だから局担(「テレビ局の」担当)という呼称にもなっている。
    我々マッキャンエリクソンのバイヤーはクライアントのための買い付けのスペシャリストであり、買うものをより良くするのが仕事です。100円のものを100円で買うのは普通で、90円で買えるように交渉したり、100円のものをなるべく多くの広告主に売ったりするのがバイヤーの役目です。日本の代理店と同じように、メディアに対してメディア担当として振る舞うこともあれば、社内において買い付けのプロフェッショナルとして振る舞うこともある。業務の幅が広いのがマッキャンのバイヤーの面白さではないでしょうか。

  • Shunsuke

    本当にその通りだと思います。担当局数で言っても、競合の大手広告代理店だったら1人が数局しか担当しないこともあるし、タイムであれば1局のみの担当の場合もある。
    弊社の場合は2~3人で1系列を担当するため、1人が10数局受け持つことになり、幅が広いです。あれこれチャレンジできる雰囲気があるのはいいところですね。

  • Kiyotaka

    他の代理店の局担に聞くと、業推(※業務推進局のこと。メディアごとにメディア予算を配分する役割を担う)や営業から言われたことをやり切るのが正義という印象があります。仮にその指示が間違っていたとしても、引き受けてテレビ局にやらせてしまうこともあるかもしれない。
    それも時には必要なことかもしれませんが、弊社では「本当にやる必要があるのか」「やらないためにはどうするか」「事前にそうならないためにどうするか」などについて、社内で話しやすい雰囲気があると思います。比較的小さい組織だから、他の会社とは違うのかな、という印象があります。営業やプランナーとの距離も近いと思います。

バイヤーのやりがいや喜びはどんなところにありますか?

  • Kanami

    嬉しいのは担当しているテレビ局が喜んでくれている時です。クライアントがテレビの出稿を考えていて、広告のコストの入札競争をした結果、そのエリアのなかで1局だけ自分の局に発注が入って、「あなたのおかげだ」と言われた時とか。テレビ局に喜んでもらうために、自分のなかでいろいろ考えて、社内外でいろんな情報を聞いたりしたことが発注に繋がったりするので、嬉しいです。

  • Kiyotaka

    我々は自社のなかで、自分の担当しているテレビ局にどれだけクライアントの予算を持って来ることができるかという勝負をやっているわけです。1番になるという目標を立てて、最終的に1位だった時は嬉しいですね。目標を達成できて、テレビ局からもありがとうと言われる。

  • Suguru

    新聞の話を出してみます。業界で初めてのスペースの取り方を開発しました。新聞で記事下と呼ばれる広告枠があるのですが、決められたフォーマットを逸脱した変形広告を提案しました。当時、クライアントの新商品が発売されるということで、これまでにない形の広告枠で広告したいという思いがありました。何度も新聞社と話し合って、決まった時は嬉しかったですね。1日だけですが全国紙に掲載されたので仕事の実感がありました。Kiyotakaさんの1位を獲るのとはまた違う楽しさですね。クライアントから、予算が100万円しかないのだけれど何かできませんか、と問い合わせがあって、自分のアイデアが上手くハマって発注をいただいた時もありました。バイヤーをやりながらアイデアを出せると楽しいと思います。

  • Shunsuke

    デジタルにもメディア担当者はいるのですが、どちらかというと、皆さんのように人と向き合うというよりは、管理画面と向き合っていると言えるでしょう。画面に向かって、どれくらいの露出量をどの期間で買います、という情報を入力したら、それで発注が決まります。トラディショナルメディアでは難しい直前の変更も、デジタルであれば可能です。人が管理してる以上、エラーもありますが、ドライだと思います。特にGAFAのような大きなプラットフォームだとその印象が強いです。
    一方で、デジタルでも小さな媒体社などの場合、既存の商品をカスタマイズしてクライアントのために売り物を作っていくことができます。実際、トラベル系の媒体などで作業したのですが、とても面白かったです。媒体社と一緒にビジネスを作っていくという意味合いにおいてはテレビもデジタルも変わらないので、そういう時はテレビのバイヤー経験が活きると思います。
    テレビのバイヤー出身で良かったところはもう一つあって、デジタルの媒体社と話す時に、広告代理店や事業会社出身の30~40歳くらいの方が出てくることが多いのですが、そういった方々と相対していく際に必要な社会人マナーや作法を、トラディショナルメディアの担当時代に身に着けられて良かったですね。

バイヤーでのタフな経験と、どうやって乗り越えたかを教えてください。

  • Kanami

    広告料金の出し値を大きく間違えてしまったことがあります。その時は何度もテレビ局に謝りに行きました。結果的には、「今度から気を付けなさいよ」と許してもらえました。やってしまったことは仕方ないので、「同じことを起こさないためにどうするか」を話しました。怒られもしますが、「あなたのためなら」と言ってもらえるような関係性はとてもありがたいです。ミスから学べて、より気合いが入りました。

  • Shunsuke

    僕もそれはありますね。広告料金を間違えて、買うべき量の広告枠を買い切れなかったことがあります。最終的には、テレビ局の人に助けてもらってなんとかなったのですが……。
    その時は、新婚旅行から返って来た初日に、メールボックスにテレビ局から来ている妙なメールがあるなと思っていて、上司に「こんなメールが来てたけど大丈夫?」と言われて確認して「うわ~」となりました。当時は1年目だったので、常に心臓がバクバクしているような状態で、ひたすら毎日局に足を運んでいました。落ち着いて「こうだからこうした方がいいです」などと言える状態でもなかったし、キツかったですね。

  • Kiyotaka

    クライアント担当の方が大変かもしれないですね。クライアントに、ミスをしてしまったので許してください、とは言えないじゃないですか。

  • Suguru

    メディアとの付き合いは、ミスがあった時でも続いていくわけだもんね。絶交、とはならない。どうやって次にリカバリーしていくか、ということは前向きに考えられる環境だと思います。

  • Shunsuke

    これは広告代理店のビジネス全般において言えることだと思いますが、ノーとは言えないですよね。言った瞬間に裏を取られる。なので、無理だと思った時も「ちょっと考えます」と言う。守備範囲外のことでも考えてくれるからこそ、相手に信頼されて相談相手になれるということもあります。
    その裏返しとして、知らないことを学習し続けないといけない。領域外の仕事でも取りにいかないと、クライアントのビジネスは維持できない。今はそれをいろんなクライアントで毎日のように繰り返しているので、それは実は辛いことなのではないかと思っています。

  • Kanami

    クライアントも社内の営業もどちらも説得できずに炎上したことがありますね。結局、テレビ局に助けてもらったんですが。

  • Shunsuke

    デジタルの場合、ミスった後にカバーするのは難しい。テレビはバディ感が強い気がします。

  • Kiyotaka

    新聞と雑誌は販売収入もあるので、広告収入に対する熱意がテレビとは異なっていますね。逆に、一度出版すると回収できないので、そこでミスが起きると地獄になります。記事っぽく見える広告で雑誌のタイアップというものがあるんですが、それを作っていくなかで、文字や色味を確認する。そこで、色味に非常にこだわるクライアントから何回も「色を確認したい」と言われるんですが、明日には刷り出さないといけないというようなギリギリの状況だと、出版社からメディア担当が詰められます。クライアントと媒体の打ち合わせで、クライアントが「OK」と言ったことを後からひっくり返す、みたいなこともあって、そうなると出版社は「広告代理店がクライアントをコントロールできていない」と激怒します。出版物に対してのプライドを感じますね。

それぞれのメディアの特徴を教えてください。

  • Kiyotaka

    先ほども話しましたが、出版社は出版物にプライドを持っているので、「このクライアントはうちの出版物に合わないのでお断りします」ということもある。紙媒体にとって、広告はあくまで出版物のなかにあるもの。出版物の邪魔をするような広告は出さない、ということも、媒体社の色によってはあったりします。そこが面白い点でもありますね。

  • Suguru

    出版社の編集部と広告部は別採用ですか?

  • Kiyotaka

    私が担当していた出版社の場合は一緒でしたね。

  • Suguru

    なるほど。新聞の場合、編集・広告・販売はそれぞれ別採用です。広告部は我々と近く、クライアントや広告代理店の依頼に親身になってくれることが多いです。クリエイティブ開発なども協業して作っていきやすいイメージ。テレビの場合は出版と同じく営業部と制作や編成は一緒に採用されているので、我々が相対しているのもざっくり言うとテレビマン。彼らにとっては、クライアントは広告主というよりは番組に協賛してくれているスポンサーというイメージ。メディアによって色がありますね。

  • Shunsuke

    デジタルの独特な点として、買い付けの結果を自分の努力によって良くできるというものがあります。広告を出稿したら自分の手を離れて終わり、ではなくて、媒体上のターゲットをアレンジするなどの工夫をして効率を改善することができる。売上にどの程度繋がっているのかという点も分析できる。広告出稿の結果を自助努力でオプティマイズできるのは面白いと思います。変化が激しく日進月歩で変わっていく世界なので、運用から離れて1年も経つとキャッチアップできなくなります。GoogleもFacebookも全部違うし、幅広く覚える必要があります。だからこそ面白い。

今後はどのようなメディアバイヤーが求められていくと思われますか?

  • Shunsuke

    どのメディアでも根本は一緒だと思います。それぞれの媒体の特性をちゃんと理解して、どうやってクライアントのビジネスに貢献するか。メディアを売るために、デジタルなら広告運用の最適化のやり方を学ぶし、テレビならどんな番組があるのか、どのクライアントのCMが出ているかを学ぶ。今後はどの媒体でもデジタル化が進み、変化が激しくなると思うので、新しいものを追うことができる好奇心は、どのメディアを担当する上でも大事だと思います。

  • Kanami

    Kiyotakaさんのスペシャリストの話でもありましたが、この人はどう考えているのかを想像する力が大事だと思います。クライアントはどう思うか、社内はどう思うか、媒体社はどう思うか、そういったことを理解しようとする姿勢は重要です。三方よしが理想ですが、それが上手く成立しない時のために私たちが間に入っています。できている、できていないは別問題ですが。(笑)

  • Suguru

    後輩に先に言いたいことを言われるっていう。(笑)

  • Kiyotaka

    メディアバイヤーといえば飲み会が激しいとか、市場価値が上がらないとかそういうイメージもあったりするのかもしれませんが、意外とそうでもないと思います。結局、これからも広告枠を買いたいと思う人たちは存在し続けるでしょうから。安く買いたいクライアントと、高く売りたいメディアの間に立って、利害が相反するなかで自分なりのゴールをもって人を動かしていく力が身に付くのが、メディア担当の良いところです。クライアントにはこう納得してもらおう、メディアはこうやって落ち着かせよう、と考えられる。10年やると飽きるかもしれないですが、数年間この場所で仕事をすることは、キャリアとして決して損ではないと思います。ぜひ「メディア担当バッチ来い!」という感じで弊社にいらしてください。

  • Suguru

    8年間メディア担当をやってきて、デジタルだけはやったことがありませんが、担当したメディアの数でいうと弊社のなかで最も多い人間になりました。予算が数百万円余っている、そういう時におすすめのメディアは無いかと聞かれます。そこでは今まで様々なメディアを担当してきた経験から、プランニングに近いことをやらせてもらっています。媒体サイドに重心を置いて、自分が売りたい媒体の提案をすることもできるし、クライアントサイドに立って、クライアントに刺さりそうな媒体の提案もできる。予算を松竹梅で出してみる、ということもできます。提案内容に縛りの無いフリー演技になった時に、作業に幅を持たせられると感じます。8年間という時間のなかでこれだけのメディアを担当できたという意味で、弊社は非常に良いキャリアを歩める場所だと思います。あなたが望むなら、弊社ではたくさんメディアを持たせてもらえますよ。若手にやれよって言っても誰も持たないですけど。(一同笑)
    メディアを知ると、日本においては非常に輝ける広告屋になれるのではないのでしょうか。メディアを制するものはアドを制すってことですかね?広告の仕事をする上では、まずはメディアを抑えておく必要があるのではないでしょうか。まあ、8年もやってきたので、あと2年くらいでいいけど。(一同爆笑)